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第四回 制度利用者の保護

内部通報制度を有効に利用してもらうため、つまり不正や違法行為の事実やその可能性を躊躇なく通報してもらうためには、制度を利用する人々に対する万全な保護体制を整える必要があります。利用者は通報の際、少なからず「まともに取り合ってもらえるだろうか」、「通報によって差別されたり、不当な扱いを受けないだろうか」など、心理的に不安や恐れを抱くと思われ、安心感のない制度である場合、利用が進まないという懸念が考えられます。そこで、今回は利用者の保護や利用者に安心感を得てもらうためのいくつかのポイントを挙げてみましょう。

1.通報者情報の秘匿を徹底する
通報者の個人情報を含む情報を適切に保護し、関係者以外に漏らさない体制とその運用が必要です。制度利用者の保護においてもっとも重要なポイントであり、一度でも情報漏えいがあると、通報者の信頼を失い誰も通報しなくなり、制度は形骸化してしまうでしょう。

2.匿名での通報を可能とする
匿名通報は、虚偽通報や不正確あるいは必要性の薄い通報の増加が懸念され、また、事実確認が困難であるといったデメリットがありますが、通報者のプライバシー確保という点では極めて有効であり通報者の安心感を高めることができます。大抵の事業者は匿名通報を認め制度を運用しています。

3.報復防止のルールを策定する<
被通報者による不利益な取り扱いがあった場合の懲戒規程など、報復を防止するためのルールをあらかじめ定めて運用し、組織全体で報復は許さない姿勢を示すことは、報復行為に対する牽制となり有効です。

4.制度を利用しやすい環境にする
例えば、複数の通報チャネル、通報手段の多様化、通報とは別の相談窓口設置など、制度を利用しやすい環境に整えることは、通報に対する安心感を高め、利用者の保護につながります。特に弁護士など、第三者が関与する仕組みは利用者の保護を図る上で有効な手段になるでしょう。

5.通報者支援体制を整備する
あってはなりませんが、万が一、通報により不利益な取り扱いを受けたり、報復があった場合の支援体制を明確にしておくことは必要です。たとえば、内部通報制度規程や人事規程などの支援について明文化することが考えられます。また、弁護士などにより法的支援が速やかに受けることができる仕組みを準備しておくことで、組織の通報者保護の姿勢を示すことができます。

6.教育・研修を行う
内部通報制度について、制度利用者に対して定期的なトレーニングを提供することは、通報者の不安感を軽減し、安心して通報してもらうために有益でしょう。また組織に属する全ての人々に対し、秘密漏えいや報復行為の禁止、それによって受ける罰則などを周知することは通報者の保護のための教育として必要です。通報者保護の観点以外においても教育・研修は重要なポイントですから、次回コラムで改めてお話したいと思います。

7.管理層のコミットメントの強化を図る
組織のトップ層が内部通報制度を全面的に支持し、通報者の保護を重視する姿勢を管理層に示して浸透させ、管理層のコミットメントとして定着させることは、通報者への安心感、および通報者を保護する組織風土につながります。

8.組織文化の醸成を図る
トップの奨励や教育・研修、そして実践を通じて、通報者を保護する組織文化を醸成し、通報者に対する不利益、差別的行為を許さない風土を根付かせることで、通報者が安心して通報できる環境を築くことができます。

いくつかポイントを挙げましたが、これらの施策により通報者が安心して通報できる環境を確保し、通報者の保護を図ることができると考えられます。

今回は制度利用者の保護というテーマで解説しました。次回(5回目)は「教育・研修」について解説します。引き続きご一読いただければ幸いです。よろしくお願いします。

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